BTSインフォメーション(暴力団追放運動推進都民センター)令和5年3月号に掲載
(以下転載)
弁護士 久保田陽子
(第二東京弁護士会 民事介入暴力対策委員会副委員長)
1 準暴力団(半グレ)の台頭
暴力団構成員及び準構成員等の減少の一方、近時、暴力団に準ずる集団として、「準暴力団」が台頭している。暴走族の元構成員等を中心とする集団に属し、繁華街等で、集団的又は常習的に暴行や傷害等の事件を起こし、特殊詐欺等の違法な資金獲得活動も行っている。明確な組織構造は有しないが、犯罪組織との密接な関係が窺われるものもある。
2 暴力団排除条項との関係
準暴力団には明確な組織構造がなく、メンバーのつながりが流動的である。準暴力団を排除するには、暴力団を中心にした「属性」要件では不十分である。実際の契約書には、属性要件を中心にした条項もみられ、準暴力団に対応できるのか懸念されることもある。
警察庁による「不動産取引契約書の暴力団排除モデル条項(売買契約書)」では、属性要件として、「暴力団、暴力団関係企業、総会屋」のほか「これらに準ずる者又はその構成員ではないこと」を挙げており、「これらに準ずる者」の例として、「暴力団準構成員」、「暴力団または暴力団員と社会的に非難されるべき関係を有している者」等を挙げている。
また、準暴力団の活動は広範・多様であり、それらに適用できるように、「行為」要件を工夫する必要もある。例えば、「暴力的な要求行為」「取引に関して、脅迫的な言動をし、又は暴力を用いる行為」等の具体的な行為に加え、「その他前各号に準ずる行為」という包括的条項を入れることが考えられる。
なお、会社代表者と同姓同名の者が、過去の逮捕記事に掲載されているが、その後明確な暴力的行為が見当たらない場合などは、包括的な条項で関係遮断できるのか懸念が残る。各企業において、頻繁に関係遮断が問題になるケースについて、予め具体的に規定しておくことも検討に値する。
3 事前審査の重要性
実際上、契約を締結し取引を開始した後には、解除に伴う負担が生じる。そのため、事前の詳細な審査が重要である。法人のほか役員まで調査を広げたり、登記簿の詳細情報をチェックしたりする必要もあろう。契約条項と同様に、個々の企業ごとに、想定されるケースやリスクの程度に応じた審査が適当と考えられる。
4 民暴弁護士として、取引開始時において、各会社の実情に応じ、入り口段階でいかなる反社会的勢力にも付け入る隙を与えないよう備えたい。